本ページでは、工務店選びを終えて実際に本契約書にサインをする前、または当日、お見積書や工事内容、契約書におかしな点はないか、チェックしていきましょう。
基本的に本契約当日は、工務店の接客スペースかご自宅にて行われ、宅建資格を所有している工務店側が契約内容を読み上げ、あなたがサインする流れ作業が繰り返されます。あるいは、書類一式がお手元にある状態でサインしておいて下さいという場合もあります。
サインをする時、施主側に不都合な契約となりうる項目が記載されていたり、今まで説明を受けてきたこととは異なる内容があったり、追加で工事費が発生したりするような項目があったら大変ですから慎重に確認する必要があります。
もし施主側が不利な記載があった場合に、どのように対処すればよいか、またどのような項目に目を光らせるべきか、ある程度事前に把握しておくことで、矢継ぎ早に行われるサイン捺印作業の中でもお気づきになれることが出来るはずです。
不都合なことを契約当日の土壇場で伝えられるようなことは無いとは思いますが、不都合な事実を先に伝えてしまっては契約が取れないと考え、わざと土壇場でサラっと説明して聞き流させてしまうようなマニュアルを作っている住宅メーカーも残念ながらあると聞きます。このような行為は、住宅メーカーの営業担当に課せられた厳しいノルマに起因することが多く、不動産業界ひいては住宅業界においては昔からの名残であり、近年はこういったトラブルは減ってきたとはいえ、今だに存在することも確かです。
これから注文住宅を建てる人が不利益を被らないためにも、是非インプットしてみて下さい。
本契約時に必ず確認しておきたい8つのチェックリスト
原則として契約書には全ての約束事項が記載されていなければなりません。
本契約(工事請負契約書)とは、注文住宅を新築したい建築主(施主や注文者ともいう)と、請負者(施工業者)との約束を文書にした書面にお互いサイン捺印して合意することです。契約書類は「工事請負契約書」の他に「工事請負契約約款」「設計図書」「仕様書」「工事費見積書」で構成されており、建築主がどんな家建てる約束をしたのかがハッキリ理解できるかどうかが大切。
あなたと担当者・設計者の間で取り決められたことの全てが、第三者が契約書類一式を見れば理解できる内容でなけれないけませんし、ハッキリと記載されていなければ実現されない、実現されなくても契約書通りとなってしまう訳です。
このため、まず、それらの本契約に係る一式の書類がしっかり揃っているか確認すると共に、「お約束事の抜けがないか」に目を光らせましょう。この確認に時間がかかろうとも、納得するまではサイン捺印してはいけません。
本契約書類一式
まずはじめに、本契約に係る一式の書類には、一体どのような種類があり、どんなことが書かれているものか知っておきましょう。
以下の書類が「抜けなく」「全て揃っている」ことを必ず確認して下さい。
また、それぞれの書類に不都合な記載があるケースを紹介しておきます。
工事請負契約書
総合契約書
着工日から引き渡し日、支払に関する金額と時期と方法、受注者と請負者の情報とサイン捺印など総合的な契約書。できれば契約日の1週間前に書類や保証書のコピーをもらって事前に不明確な箇所がないかご確認下さい。特にローン特約の期日が設定されているか要確認
工事請負契約約款
契約内容の詳細
契約書には記載しきれない詳細な事柄について書かれた書面です。工事請負契約約款は請負契約書の添付書類として付属していることが一般的。建築中の損害に関する取り決めや、契約解除、引き渡し日の遅延損害についてはよく確認
設計図書
様々な種類の設計図
設計図面は基本設計図、配置図、平面図、立面図、断面図、実施設計図、確認申請図、工事契約図面があります。工事中に変更があった場合は竣工図も。基本設計図はお客様の要望を反映し、実施計画図はそれをより詳細に、実際に建てるのは工事契約図になります。よって基本・実施・工事契約図に差異がないか確認することが重要。
仕様書
どこに、何の材料や設備が使われるかの一覧表
外装・内装・装飾などとても沢山の材料や設備が一覧表になっています。仕上げ表とも呼ばれます。設備や建材のひとつひとつの型番やお色、配置場所を確認してください。これも伝えたのに反映されておらず、そのまま工事が進んでしまうことのある項目。設計図と合わせてどこに何が取り付け工事されるか、ご確認下さい
工事費見積書
価格交渉後の本見積り書
言った言わないのトラブルを避けるため、1つ1つの工事内容と金額を納得いくまで精査してください。工事内容の項目は専門用語も多く、また工務店によって書き方も異なりますため、どんな工事なのか担当者にしっかりと聞きましょう。
本契約は、工事請負契約書に詳細な工事内容を記載し合意することで、認識の違いをなくし、トラブルを未然に防ぐことが目的。しかしながら契約内容に合意したものの、認識の違いや不明確な部分で後日トラブルに発展するケースがあります。
本契約当日だけで確認するのではなく、1週間程度事前に書類一式のコピーをもらって確認することが非常に大切です。
また、本契約にあたり事前にチェックしておきたいこと5選と、契約時にチェックしておきたいこと3選を記載しておきます。
どの項目も確認を怠ってしまうと取り返しのつかない致命的なミスになり得る8つのチェックリストとなっていますので、しっかりと頭に入れるようにして下さい。
本契約の前にやっておくべきこと5選
本契約当日の前に、やり残していることがないか、不備がないか、確認しておいた方が家づくりの失敗と大幅な追加工事を避けられます。
以下に本契約の前に確認しておきたい5項目を書いておきます。
敷地調査と地盤調査
敷地調査と地盤調査は、土地を所有し建物を建てる上では必ず必要な工程になります。
注意したいのは、仮契約の段階でこの調査を行っているかどうかです。ハウスメーカーや工務店の中には、この敷地調査と地盤調査を後回しにする場合があるためご注意下さい。地盤調査を本契約の後に行うことで、追加工事が発生しても解約できない(厳密に言えば着手金や申込金と呼ばれる払込済みの金銭が返却されないため)ことを理由に、地盤改良費を見積もりしないことで総額を安くみせる手法を用いていることがございます。当然ながら地盤改良が必要な土地ですと、10万円から最大300万円程度の出費増となり総額が跳ね上がる可能性があります。
地盤改良は、どの住宅メーカーと契約しても建築基準法上免れないことですから、地盤調査や敷地調査を行わずに設計やお見積もりを行っている場合は要注意です。
本契約をする工務店を決めるのに重要なファクターに「価格」があり、価格とは「総額」で比較して決めるべきなので、安く見積もられて契約後に追加料金が発生するような事態は避けたいところ。追加工事で予算オーバーしてしまうことについては、契約後に一番二番を争う頭を悩ませる事項ですし、着工までに時間がかかったり(その間、家賃が発生することも)、非常にストレスを感じることになるでしょう。
ご契約に至る前に、必ず敷地と地盤の調査に関しての説明と改良する必要があるのかどうかを確認しておいて下さい。
間取りや仕様の変更がないか
上述でも書いたように、ご契約は「総額」をハッキリし、変更のない状態で行うのが鉄則。間取りや仕様、建材や建具にいたるまで、「後から決められる」と言われても、先に決めてから総額を出してもらうこと。これがしっかりできていなければ総額から比較をしてあなたは契約にのぞんでいないと言えます。よくある「抜け」や「変更点」は地盤改良、照明やカーテンレール、外構部分は別途(追加工事)などがあります。これらの抜けや変更点が一切ないと自信を持って言える状態で総額を出してもらい、その総額に納得の上で契約にのぞんで下さい。
交渉のやり残しはないか
ご契約書にサイン捺印を済ませてしまうと、価格の変更は一切できないものと認識してください。価格だけでなく有料のオプションが無料で付属するケースもあります。後悔のないように交渉ごとはご契約日までに必ず決着をつけるようにお願いします。
口約束で終わっていないか
ご契約書の一式や図面一式を事前に取り寄せていないと、ご契約日当日あるいはご契約後に言った言わないの論争になりかねません。打ち合わせ内容の議事録やメモなどの証拠だけでなく、ご契約書の工事内容にちゃんと記載があるか確認してください。これはとても多いトラブルで、トラブルに発展してしまうと最悪弁護士費用がかかってきてしまいます。
あなたと営業担当者や設計者の間で伝達漏れや伝達ミスがあったとしても、ご契約日までに設計図と工事内容、見積書に反映していないと、工事されません。相手のミスだとしても契約違反には当たらないので、そのまま工事は進んでしまいますし、もしどうしても採用したい場合は変更工事として追加料金がかかってしまうことさえあります。取り返しがつかないので、必ず漏れやミスがないか確認しながら進めて下さい。
未払いのローンがないか
これは本契約というよりも住宅ローンの本審査前にやっておきたいこと。本審査は、現在の収入や貯蓄額、住宅ローンを組んだ場合の返済比率などから審査が行われます。経営者の場合は法人や事業所の決算書も審査対象。この審査時にクレジットカードの引き落とし不能が続いていたり、その他のローン(自動車ローンやリボ払いなど)があると仮審査は通っても本審査が通らないことがあります。身辺整理は本審査の前に未納がないか確認してクリアにしておきましょう。実際のご契約書、図面や最終見積書を金融機関に見せて融資実行をしてもらいます。
本契約時にしっかり確認すべきこと3選
契約書まわりのミスや不備がないことを確認したら、次にご契約当日にしっかり確認すべきことを記載しておきます。
書類一切の確認
書類一式の確認は、上述したように事前確認が済んでいれば特に不備はないと存じますが、念の為すべての契約に付随する書面が揃っているか、またお互いに合意することを証明する書類ですので、必ず双方の判子と署名がなされているものが手元に所持できるように確認しましょう。
ローン特約と契約解除について
まずは住宅ローン特約について本契約書に盛り込まれているか確認して下さい。
ローン特約とは、万が一本審査に通らず融資実行が行われなかった場合、本契約を白紙撤回できるお約束事となります。ローン特約には通常期限が定められ、期限までに融資を利用することができなければ契約解除となります。契約解除となれば、これまでに支払った手付金等の代金はすべて返還されます。(✳︎仮契約金を除く)
この項目が盛り込まれていないと、万が一の場合に支払った金銭は返還されないということになってしまいますから、必ずローン特約を盛り込んでもらうようにお願いしましょう。
次に、施主都合による契約解除についても確認しましょう。
一般的には本契約(工事請負契約)を締結した後に、契約を解除する場合はローン特約を除き違約金が発生してしまいます。多くある事例では御座いませんが、思わぬ事故や病気を患いやむを得ず途中で契約を解除しなくてはいけない場合や、建築会社とのトラブルによる契約解除があげられます。
もしも途中解除が発生してしまった場合に、手続きや違約金の発生についてが明記されているはずです。本契約時にしっかりと確認しておくことをオススメします。
保証・アフターサービス
何がどこまで保証されるのか、無償での保証なのか、有償での保証なのか確認しておきましょう。
保証に関してアドバイスしておくと、一概に保証期間が長いことが優れているとは言い難い点。大手ハウスメーカーなどでありがちなのが、独自の工法を用いているため、そのハウスメーカーでなければ補修・修繕が行えない場合があります。この場合のメンテナンスやリフォームなどは、都度そのハウスメーカーで依頼しなくてはならず、他の業者を使って補修した時点で保証切れになるなどのある意味「罠」が存在します。自社でしか補修・修繕を行わせない、行えないことを逆手に取り高額な費用を請求されたりすることも御座います。
例えば、引き渡しから「20年で修繕費いくら取る」、「30年目でいくら取る」といったメンテナンス部門の営業担当には厳しいノルマが課せられていたりします。
ですから、「大手で建てると保証が長くて安心!」なんて言っている人がよくいますが、実は結構リスキーな保証実態であったりします。
このような大手の保証制度のあり方が良いか悪いかの判断は各々がするべきですが、独自工法で長期保証よりも、どの業者でも修繕・メンテナンスが可能な木造軸組工法やツーバイ工法で建てた方が、将来的にはリスクが低いことさえあることを申し添えておきます。
工務店の保証制度は、ほとんどが瑕疵担保責任である10年保証が大半で、よくて無償15年保証、無償20年保証なら言うことなしと覚えておきましょう。
瑕疵担保責任は法律で定められた10年保証です。保証の内容は、躯体と防水のみで、軽微な修繕などは義務化されていません。例えば壁紙の剥がれや浮き、建具の不具合などは法律で定められたものではありませんので、このあたりのアフターフォローがどうなっているかは要チェックすると共に、書面または資料などに明記されているか確認しておいた方が良いでしょう。
軽微な不具合であっても、新築を建てて何千万円と支払いをしていく家で、入居後すぐに不具合が発生してはストレスを感じます。基本的に木造は伸縮しますから、どんなに腕の良い職人さんが建てた家であっても、高級ハウスメーカーが建てた家でも経年によって多少の不具合は発生します。そこをどう対応してくれるのかが重要なポイントになってきます。
その他の注意事項
その他の注意事項としては、ご契約当日の重要事項説明もあげておきます。
重要事項説明は宅地建物取引士がその内容を読み上げて、内容に合意する形でサイン捺印が行われます。
簡単に言えば、「あなたが買う土地はこういう状態のもの、あなたが建てようとしている建物はこういう仕様の家です。」と説明を受けるものです。
正式な契約とは異なりますが、ひとつひとつ確認して進め、思っていたことと違うという点があれば、しっかりと質問して疑問をクリアにして下さい。
もう1つ注意して見ておくべきは、契約書類に含まれる「工事請負契約約款」です。
工事請負契約約款は、工務店とあなたのお家だけに係る特約です。契約書に記載しきれない取決めを詳細に記した書面。工期に遅延が発生したり、契約書通りの家ではなかったりといった、トラブルが生じたときの対応方法についても記載されています。
本契約後の流れ
本契約を終えると、ついに待ちに待った建築着工が始まります。
ご契約から竣工(完成)までには一体どの程度の時間がかかるのでしょうか、またお支払いに関してはどのように行われていくのでしょうか、詳しくは次のページで執筆いたしますが、ここでも簡単に把握しておいて下さい。
大体の流れがわかっていると、よりイメージし易く理解も深まることでしょう。
工程 | 期間 | 支払い目安 | 解説 |
---|---|---|---|
本契約・建築確認申請 | 1週間 | 契約金として工事費の10%と諸費用全額 | 本契約が済むと、建築確認申請に入ります。これ以降は基本的に間取りの変更や外壁の変更などは不可能になります。厳密に言えば、変更を加えた場合は、再度建築確認申請のやり直しとなり、費用も発生します。 |
近隣への挨拶回り | 1日 | 工事の騒音や振動など、ご近隣に迷惑をかけてしまう前に施主自ら挨拶周りをしておいた方が良いです | |
地鎮祭 | 1日 | 3万円〜5万円 | 必要に応じ、希望があれば行います。 |
地盤改良 | 1日〜2日 | 10万円〜300万円 | 地盤が弱ければ、必要に応じて改良工事を行わなければなりません。支払いは工事内容に含まれている場合と追加工事費として請求される場合もある |
着工 | 1ヶ月程度 | 工事費の30% | 仮囲いから基礎作り、給排水関係の工事、足場組み、1階床部分まで |
上棟・中間検査 | 3ヶ月 | 工事費の30% | 基礎工事が完成し、基礎検査を経て上棟は柱や筋交いによって家の躯体を建てていくこと。建物が初めて立体となる。2階床や壁、電気配線や断熱気密施工、防水処理や設備の取付けなどの仕様を全て各専門業者が施工していきます。✴︎都度見学に行き、職人さんとコミュニケーションを取ることも大事。希望によっては上棟式や上棟内覧会を行う。 |
竣工・完成内覧会・完成検査 | 1週間 | 外構以外の建物に係る工事一式が完成します。完成時に建て付け不具合、設備の動作確認などを行い、不具合については修正依頼を出します。細かい箇所の調整なども気が付いたところは引き渡し前に完結させましょう。 | |
引き渡し | 残代金のすべて | 実際に鍵を受け取り、登記を済ませましょう。これでいつでも新居にお引越しが可能です。 |
ご契約から1ヶ月程度の準備期間を経て、着工から完成までにおおよそ4ヶ月、修正や調整も行い引き渡しまでにさらに1ヶ月程度と覚えておけばよろしいかと思います。
次のページでは、ご契約後からお引き渡しまで、重点的に修正や調整などお家の不具合などをきっちりと修正してもらう方法や、詳しい指摘箇所を見つけるためのアドバイスなどについて綴っておきます。
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